私の職場は家です。「母親になって後悔してる」

思ってても口に出さないことってたくさんある。

思ってても口に出さないことランキングがあったとしたら、女性部門第1位に輝くのではないかと思うのが「母親になって後悔してる」である。


私自身は未婚で35歳になり、母親になれる可能性は刻々と先細りしている訳だけど、歳を重ねるにつれて子を持つことへの恐怖は膨らんでいく一方である。


恐怖の原因は街で見かける子連れの母や、職場で見る時短勤務で働く母の余裕のない姿である。

母たちが背負っているものの重さに、とても自分が耐えられるとは思えない…


私が子を持つことへの不安を伝えると、母たちが口を揃えて言うのは「チャンスがあるなら産んだ方がいい」「自分の子が生まれたら可愛いと思える」という前向きな言葉である。


1人だけ、「子どもを全然可愛いと思えないし、別に産まなくてもいいと思う」と言った友人はいたが、その後「子どもと会話ができるようになってから子育てが楽しくなった」と言うようになり、結局2人目を産んでいた。


という次第で、疑問が晴れずモヤモヤしていたところ、たどり着いたのが「母親になって後悔してる」という本だった。

これまで母親たちの胸の内に秘められていたことが、ついに公に発表できる世の中になったのだ。


これに対して「子どもがかわいそう」という声があるが、この本で語られているのは”生まれた子どもを愛しているかどうか”ではなく、それ以前に”子を持つか持たないか、女性が自分の意思で選択できるか”という点である。


母親になることの後悔と、子どもを愛することは両立する。


「子どもがかわいそう」って言われたらもう”何にも言えねぇ…”ってなるし、この議論を潰してしまうのは結果的に将来不幸な家庭を増やすことに繋がる気がする。



この本では、イスラエルで行われた研究の結果がまとめられている。

イスラエルは女性が平均で3人の子どもを産む国(!)で、ユダヤ教の教えから産め産め圧力がすごいらしい。

著者は、母親たちに地獄のような質問を投げかけていくのですが、母親たちは本心を口に出せることに一種開放感を感じてるようでもありました。


地獄の質問例

  • 母になった理由は?
  • 過去に戻ることができるとしたら、それでも母になりますか?
  • 母になったのが自分にとって間違いだったと理解した瞬間は?
  • 母になることに何かメリットがあると思いますか?

こりゃ地獄やな…と特に感じたやり取りを紹介するので、興味がある方はぜひ本を読んでみてほしいです!

母になった理由は?

私は親になることには多くの利点があると思います。それが選択の結果によるものかどうかはさておき、どんな分野であっても、部外者になるのは辛いものです。子どもがいれば、たとえ他の面で社会からはみだしていたり少数派であったりしても、ある程度の仲間入りができて、人生が楽になるのです。この社会では、「子どもをいつ産むの?」という質問が常に待ち構えているので、その義務を果たしたため、もう最前線で戦う必要がなくなります。これ以外の項目をクリアしていなくても構いません。このひとつをクリアすればいいのです。

「母親になって後悔してる」P.49

過去に戻ることができるとしたら、それでも母になりますか?

25歳のときに息子を産みました。自分と世間について、今わかっていることを当時の私が知っていたら、確実に産んでいませんでした。絶対にそうです。ひとりしかいないことを感謝しない日は、1日もありません。「ひとりだけなのはラッキーだ」と言わない日は1日もないのです。その前に、私は心の中で言います、「ひとりいるのが残念だ」と。むしろいないほうがいいのです。

「母親になって後悔してる」P.100

母になったのが自分にとって間違いだったと理解した瞬間は?

息子を抱いて病院を出た日にパニックになりました。その日、自分がしてしまったことを理解し始めたのです。その気持ちは何年もの間に強くなっていきました。(中略)もう後戻りできないということです。いいですか、これは奴隷化なんです。奴隷。退屈な重労働なのです。

「母親になって後悔してる」P.125、126

いつも人から「あなた、仕事をしてるの?」と訊かれますが、私は「いいえ!一日中ピアノを弾いています」と答えます。もちろん働いていますよ!私の職場は家です。私は家の中で犬のように労働してきました。夫が手伝ってくれていたら、全然違ったことでしょう。

「母親になって後悔してる」P.273

母になることに何かメリットがあると思いますか?

もちろんです。子どもが与えてくれる愛は男性の愛とはまったく違いますから。その愛はとても楽しくて、子どもが幼いときは、無条件の愛です。何にも代えられません。成長してくると、難しくなります。自立を望み、複雑で、違ってきます。時に、それは短剣のように心に刺さります。それからもちろん逆転することも。恐ろしい痛みを感じます。最初はいつも抱きしめたくなります。楽しくて、本物の絆が感じられる。きっと、子どもに必要とされているからですね。でも、子どもはすべてを奪います。あなたからすべてを奪うんです。

「母親になって後悔してる」P.141

「母親になって後悔してる」を10秒で説明すると

未婚や子なしは肩身が狭いこともあるが、世間体のために子を持つと地獄を見る可能性あり。自分の意思で選択しよう。

どんな人におすすめ?

3位 誰にも本音を話せず悩んでいる母

2位 出産のリミットに焦っている女性

1位 子を持つことが一人前の証だと思っている人

この本について

タイトル母親になって後悔してる
著者オルナ・ドーナト Orna Donath
イスラエルの社会学者(博士)、社会活動家。
テルアビブ大学で人類学と社会学の修士号、社会学の博士号を取得。
出版社新潮社
発売日2022/3/24
ページ数320ページ

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